「いい人だから」というファン化購入の罠
どーも、とーるです。
今日は“ファン化”についてお話をしていこうかなと思っています。
今のSNS時代、商品の質や実利よりも「誰から買うか」が過剰に重視されています。
「共感」や「ストーリー」が購買のトリガーになる。
これ自体はマーケティングの手法として間違っていません。
ですが、買い手であるあなたの視点に立ったとき、そこには巨大な落とし穴があります。
あなたも、スクールに入ったり、高額な講座を買ったりしたとき、心のどこかで「この人が好きだから」という理由で決済ボタンをポチッと押してませんでしたか?
いわゆる「ファン化」です。
「この人のライフスタイルに憧れる」「この人の発信はいつも元気が出る」。
そう思って飛び込んだ世界。
でも、ここからが「地獄」の始まりです。
いざ始めてみても、思うような実績が出ない。
毎日必死にタスクをこなしているのに、成功する兆しすら見えない。
そんなとき、あなたの脳は無意識にこう囁き始めます。
「でも、〇〇さんは本当にいい人だし。個別チャットでもあんなに励ましてくれた。私が結果を出せないのは、きっと私の努力が足りないせい。あの人を信じていれば、いつか……」 はっきり言います。
「その人がいい人であること」と「あなたが成功するかどうか」は、全くの別問題 です。
今のあなたの状況を、もっと客観的に、冷徹な視点から見てみましょう。
あなたは今、「推しのアイドルのファンクラブ」に入り、高額なオフ会に参加して、なんなら一緒に一泊二日の旅行に行き、憧れのあの人とツーショット写真を撮って、SNSにアップしている。
そして、そのアイドルが語る「夢を叶えるためのいい話」を聞いて、心がポカポカと穏やかになっている。
……これ、ビジネスですか?
いえ、ただの「推し活」です。
アイドルがアイドルでいられるのは、彼らが「アイドルとして生き残るための緻密な戦略」を遂行しているからです。
その戦略は、あくまで「選ばれし者」である彼らだからこそ機能するもの。
その戦略を、一ファンであるあなたにそのまま横流ししたところで、あなたがアイドルになれるわけがありません。
ファンがアイドルの真似をしても、それは「少し目立つファン」で終わるだけ。
ビジネスとは、あなたが提供する価値に対して対価が支払われるゲームです。
「憧れの人に近づけた喜び」にお金を払っているうちは、あなたはまだビジネスのスタートラインにすら立っていません。
「システム1」の暴走
なぜ、僕たちはこんな単純な罠にハマってしまうのか。
行動経済学で有名な「システム1(直感・感情)」と「システム2(論理・分析)」の話をしましょう。
システム1(速い思考): 「この人好き!」「フォロワー多いから凄そう!」「今だけお得!」と直感で、脊髄反射的に動く。
※ヒューリスティック システム2(遅い思考): 「本当にこのノウハウに再現性はあるのか?」「今の自分のフェーズに合っているか?」と論理的に疑い、検証する。
※システマティック 本来、ビジネスという高額な投資判断においては、システム2をフル稼働させるべきです。
しかし、SNSの「ファン化」の魔力は、あなたのシステム2を眠らせます。
さらに問題なのは、システム2が発動するタイミングです。
多くの人は、「講座を買おうかな?」と心が決まりかけた、決済直前のタイミングでようやくシステム2を起動させます。
ですが、その時のシステム2は、「正しく分析する」ために動くんじゃありません。
システム1が決めてしまった 「買いたい!」という結論を、後付けで正当化するために、無理やり理屈をこねくり回すために使われる んです。
「今買えば、自己投資になるし(合理的正当化)」 「家族との時間を作るために、この100万円は必要経費だ(サンクコストの無視)」 こうして、バイアスまみれの判断で、あなたは「アイドルとの写真」に大金を投じることになります。
バイアスを解くための「3つの問い」
もしあなたが決済前に、システム2を正しく発動させていれば、その「高い勉強代」は払わずに済んだはずです。
次の3つのバイアスに、あなたは気づけていましたか?
フォロワー数バイアス(権威性): 「フォロワーが多い=商品が良い」は本当か?
それは単に「集客のプロ」であることを示しているだけで、教育のプロ、あるいはあなたの悩みを解決するプロである証明にはなりません。
ハロー効果(人格の誤認): 「いい人そう」「家族を大事にしていそう」という一面から、その人のビジネス能力まで高く見積もっていませんか?
人格者であることと、あなたに利益をもたらすコーチング能力があることは、独立した変数です。
フレーミング効果: 「本来は100万円の価値がありますが、今だけ特別に30万円です」という見せ方に、根拠のないお買い得感を感じていませんか?
勉強代にしては、あまりにも高すぎます。
そのお金で家族旅行に行った方がマシで
冷静に、数学的な期待値で考えてみましょう。
その数十万円を、ビジネス講座に突っ込む代わりに、家族旅行に使っていたらどうなっていたでしょうか。
子供たちは一生の思い出を作り、旦那さん(もしくは奥さん)との絆が深まり、家庭内は笑顔で溢れる。
その結果、旦那さん(あなた)のメンタルが劇的に安定し、仕事のクオリティが上がり、ボーナスや昇給、あるいは副業での落ち着いた成果に繋がる……。
投資収益率(ROI)を数式で表すなら、こうなるかもしれません。
R (ROI / Return on Investment): 最終的な投資利益率。
H (Happiness): 旅行や体験によって得られる幸福度。
P (Performance): 幸福度が高まることで副次的に得られる、仕事や活動のパフォーマンス向上。
I (Investment): その体験に支払った投資額(費用)。
「そんなの可能性が低いやんけ」と思うかもしれません。
でも、 「いい人」に払ったお金が、ビジネスの成果として返ってくる可能性の方が、客観的なデータで見ればずっと低い んです。
ビジネスは、冷徹な数字と戦略のゲームです。
「好き」という感情は、ガソリンにはなりますが、ハンドルにはなりません。
「カモ」を卒業したいなら、一旦スマホを置いて、システム2を叩き起こしてください。
バイアスを脱ぎ捨てて、冷たい水で顔を洗ってください。
そこからが、あなたの本当の成功への第一歩です。
そもそも“ファン化”とは
そもそも「ファン化」という言葉は、本来 「愛用者(リピーター)」を育成するためのポジティブな概念 として存在していました。
「この商品を使って良かった!」「また次もこのブランドから買いたい」。
そんな顧客満足度の積み重ねの先に、揺るぎないファンが生まれる。
これが本来の姿です。
ですが、今のSNSで叫ばれている「ファン化」は、それとは全くの別物。
一言で言えば、「(満足度ではなく)買わせることに全集中した略奪戦略」と言えます。
今、SNSで盛んに行われている高額塾やコンサルは、その多くが「リピーター」という概念を想定していない単発・高額の買い切りモデルです。
「一度売ってしまえば、次のリピートは必要ない」という前提だからこそ、中身の満足度よりも、まずは決済ボタンを押させるための「人格の演出(推し活化)」に全リソースを割く。
「リピートされないから、一度の成約で限界まで搾り取る」 そんな歪んだ構造が、今の「ファン化」という言葉の裏に隠れています。
ですが、そんな「とりあえず買わせればいい」という戦略は、そう長くは続きません。
なぜなら、今のSNS時代は、「悪評」の伝達スピードもまた、かつてないほど速いからです。
一度でも「中身がスカスカだった」「アイドルごっこをしていただけだった」という不満が溜まれば、その噂は一気に拡散され、あなたの名前は瞬時にブラックリスト入りします。
「誰から買うか」で人を惹きつけ、買ってもらう。
それは一つの入り口です。
でも、その後に「何を提供するか(商品力)」が欠けていれば、あなたのビジネスは一瞬で崩壊します。
「ファン」という言葉を、都合の良い「搾取の対象」として使っていませんか?
誠実な満足度の先にしか、本当の継続はありません。
なんつて
とーる|行動経済アナリスト
