コラム#57マーケティング

「売れるはず」という名のギャンブル

どーも!とーるです!

最近、近所の定食屋に入ったときの話なんですが。

「アジフライ定食」を頼んだら、店主がサービス精神旺盛な人で、なぜか付け合わせに「大量のひじきの煮物」と「ポテトサラダ」と「おまけのナポリタン」を乗せてきたんです。

お皿の上はもう、大渋滞。

僕はサクサクのアジフライが食べたかっただけなのに、隣のナポリタンのケチャップがフライの衣に侵食してきて、衣がベチャベチャになっている。

店主は「サービスだよ!お得でしょ!」と満面の笑み。

ありがたい……ありがたいんだけど、「これじゃない感」がすごい。

あなたもこんな経験ないですか??笑

なんていうんだろう...「小さな親切、大きなお世話」みたいな....

実は、今のSNS起業界隈はこの「アジフライ定食」だらけです。

良かれと思って詰め込みすぎて、肝心のアジフライ(本質的な価値)を台無しにしている。

というわけで、今回は、多くの起業家が陥っている「希望的観測」という名の呪いと、本当に求められる価値の作り方について、解説していきます。

【観察】「売れるはず」という名のギャンブル

今のSNSを見ていて一番危ういなと感じるのは、ほとんどの人が「プロダクトアウトという名の希望的観測」だけで商品を考え、集客をしていること。

「私はこれが得意だから」「このノウハウを詰め込めば、高額でも売れるはずだ」

これ、ビジネスじゃなくて「祈り」です。

自分が作りたいもの、自分が信じたい価値を、相手が欲しがっていると勝手に定義して、暗闇に向かって全力でバットを振っている状態。

『"いい商品"="売れる商品"というわけではない』。

残念ながら、市場はあなたの「熱意」には1円も払いません。

市場が払うのは、自分たちの「不の解消(悩み・不満・不安)」に対してだけです。

「自分が作りたいもの」を入り口にするプロダクトアウトは、実績のある天才だけが許される特権です。

例)エアコンクリーニングと「郵便ポスト」のパラドックス

ここで、価値の捉え方について重要な話をします。

あなたが「エアコンクリーニング」を業者に依頼したとしましょう。

業者がやってきて、エアコンをピカピカにしてくれた。ここまでは「期待通り(満足)」です。

その業者が帰り際、こう言いました。

「ついでに、郵便ポストもピカピカに磨いておきました! サービスです!」

あなたはどう思いますか?

「あ、ありがとう(苦笑)」くらいですよね。中には「勝手なことしないでほしい」と思う人もいるかもしれない。

実はこれ、僕が5年前に友人とハウスクリーニング事業を立ち上げた時の、実話なんです笑。

その時の相方(オーナー)が、まあ面白いというか、プロダクトアウトの権化みたいな男でして笑。

ある現場でエアコン掃除が終わった後、彼はおもむろに外へ出て、頼まれてもいない「郵便ポスト」をピッカピカに磨き上げたんですよ。

戻ってきた彼は、まさに「どや!」と言わんばかりの誇らしげな顔。

一方、それを見た依頼者さんは、なんとも言えない「苦笑い」を浮かべていました。

現場を離れた後、彼が満足げにこう言ったのを今でも覚えています。

「あの人、絶対郵便ポスト掃除してほしいと思っとったに。俺には分かるわ」

……いや、違う。

その人はエアコンを掃除してほしかったんだよ。

これこそが、起業家が陥る最大の罠です。

「相手が求めているはずだ」という勝手な思い込み(プロダクトアウト)が暴走すると、相手の「苦笑い」を「満足の笑み」だと脳内変換し、ニーズとは180度違う方向に全力を出してしまう。

この「どや顔の友人」に、あなたはなっていませんか?

これ、「期待以上」ではなく「期待とは異なる価値」なんです。

相手が求めているのは「綺麗な空気」であって、「綺麗なポスト」ではない。

ところが、SNS起業家はこの「ポスト磨き」を付加価値だと勘違いして、商品に山ほど詰め込みます。

  • 100本以上の動画講義(全部見る時間なんてない)
  • 24時間いつでも質問OK(そんなに質問することない)
  • 毎日のマインドセット配信(正直、通知がうるさい)

「高額で販売したいから」という自分勝手な理由で、ゴールに関係のないものを詰め込む。

これは付加価値ではなく、「無駄な付加価値」です。アジフライの衣をベチャベチャにするケチャップと同じなんです。

正解は「同時並行」のプロトタイプ戦略

じゃあ、どうやって「ズレていない商品」を作ればいいのか?

ここで、以前お話しした「チャンク」の概念を実践的に使います。

まだ読んでないよぉという方は後からでも読んでみてください。

#コラム54:その「謎のケーブル」、何に繋がっているんですか?

① 大チャンク(仮のゴール)を決める

まずは「誰をどこに連れて行くか」という大きな旗を立てます。でも、この段階では中身をガチガチに作り込んではいけません。

② 小チャンクで「認知」と「検証」をバラ撒く

大チャンクから逆算した、即効性・簡単・気軽な「小チャンク(SNS投稿)」をバラ撒きます。ここで大事なのは、フォロワーとのコミュニケーションです。

「どのネタに反応が良いか?」「何に一番悩んでいるか?」この反応を市場でゲットしましょう。

③ プロトタイプ(モニター)を招き入れる

商品が完成してから売るのではなく、「商品を開発しながら、興味がある人をプロトタイプ(モニター)として招く」んです。

実際に人を動かし、実施していく過程で「取捨選択」を行います。

この実測値に基づいて、ゴールのために「本当に必要なもの」だけを残していく。これがマーケットインとプロダクトアウトの融合、つまり「共創」のプロセスです。

【心理学】「イケア効果」と「多選択のパラドックス」

なぜ、人は不要なものを詰め込んでしまうのか。ここには2つの強力なバイアスが働いています。

イケア効果:自分が苦労して作ったものに愛着が湧きすぎて、客観的な価値を見失う心理です。「これだけ頑張って作った動画だから、絶対に入れるべきだ」という執着が、顧客の利便性を損なわせます。

多選択のパラドックス:「選択肢が多い方が、相手は喜ぶはずだ」という思い込みです。行動経済学では、選択肢が多すぎると人は決定を回避し、満足度が下がることが証明されています。

「ハイブリッド商品」を作る3ステップ

自分を殺さず、かつ確実に選ばれるための具体的な手順。これが海外の成功事例やH2H戦略の核となる部分です。

① 悩みは「外」から借りる(マーケットイン)

まずは自分のやりたいことではなく、ターゲットが「夜も眠れないほど切実に悩んでいること」をリサーチします。

悩みを語る「言葉」は、必ず相手のものを使ってください。自分の中から出た言葉は、相手に届く前に「あ、この人自分のことしか考えてないな」と検知されます。

② 答えは「内」から出す(プロダクトアウト)

その悩みに対する解決策として、世の中の「正解」をなぞるのではなく、あなた独自の経験や哲学をぶつけます。

「普通はこう言われるけれど、私はこう思う」というあなたの視点こそが、選ばれる理由になります。ここで初めて「あなた」という個性が価値に変わります。

③ 価値を「翻訳」する(ハイブリッド)

最後に、あなたのこだわりが「相手の未来をどう変えるか」を、相手が理解できる言葉に翻訳します。

あなたが「良い」と思うことではなく、相手が「それなら欲しい」と思える形に整える作業です。

「入り口は相手の悩み、出口はあなたの想い」

このバランスが取れたとき、発信(運用)での無理なキャラ作りも、サービス提供での違和感も消えていきます。

ここまで「独りよがりのプロダクトアウトは迷惑だ」という話をしてきましたが、誤解しないでください。あなたの「こだわり」や「哲学」が不要なわけではありません。

重要なのは「出す順番と場所」です。

SNS起業における最強の布陣は、商品を「二階建て」で設計することです。

1階部分:フロント商品(入口)=徹底的なマーケットイン

ここは「お店の入り口」です。まだあなたへの信頼がゼロの状態。

ここで「俺のこだわりの出汁が…」と語っても(プロダクトアウト)、客は「うるさいな、早く腹を満たしたいんだよ」と帰ってしまいます。

フロント商品では、あなたの自我を完全に消してください。

徹底的にリサーチし、相手が今すぐ解決したい「顕在的な悩み」に対して、最も分かりやすく、即効性のある解決策を提示する。

「そうそう、それが欲しかったの!」と言わせることに特化するのです。これが集客の最大化に繋がります。

2階部分:バックエンド商品(本質)=強気のプロダクトアウト

フロント商品で「この人は私の悩みを分かってくれる」「この人の言うことは間違いない」という信頼を獲得した後。ここで初めて、客を「2階(奥の座敷)」に通します。

ここではもう、市場に媚びる必要はありません。

あなたが本当に伝えたい「本質的な解決策」、独自の理論、哲学を、自信を持って提示してください。

なぜなら、1階を通過した客は、もう「あなたの話を聞く準備」ができているから、です。

「実は、あなたが今悩んでいる〇〇の根本原因は、ここにあるんです。それを解決するには、私のこのメソッドしかありません」

この段階で出すプロダクトアウトは、独りよがりの押し売りではなく、「信頼した相手から提示される、唯一無二の救済策」に変わります。

「入口(フロント)は相手のために、奥(バック)は自分の信念のために」

これこそが、個人起業家が目指すべき最適解なのです。

マーケティングの歴史を振り返ると、ブログ時代から現在のSNS時代まで、常に同じことが繰り返されています。「やり方(小チャンク)」の認知が広まれば広まるほど、その戦略は腐っていきます。タピオカブームと同じです。

かつての「これを詰め込めば売れる」というテンプレは、すでにユーザーに見抜かれています。

今、求められているのは「情報の量」ではありません。

「私の複雑な悩みを、どれだけシンプルに削ぎ落として解決してくれるか」という「精度の高いチャンク」です。

「希望的観測」で肥大化した商品は、必ず自重で潰れます。一方で、プロトタイプを通じて市場の声を聴き、磨き上げられた商品は、最小限の力で最大の成果を生みます。

結論:アジフライをベチャベチャにするな

「高く売りたい」という自分のエゴを、付加価値という言葉でカバーしようとするのはやめましょう。それは、エアコンクリーニングのついでにポストを磨いて、追加料金を請求するのと同じです。

あなたの「大チャンク」は、相手のどんな「不」を解消するものですか?

そのために、今バラ撒いている「小チャンク」はちゃんと機能していますか?

そして、作り込みすぎる前に、生身の人間をモニターとして招き、彼らの反応を鏡にして商品を削ぎ落としていますか?

ビジネスとは、あなたが言いたいことを叫ぶ場所ではなく、相手のゴールへの道を「整備」する仕事です。

余計な煮物やナポリタンを皿からどかしましょう。

サクサクのアジフライだけを、最高の状態で提供する。その「潔さ」にこそ、高単価でも選ばれる本物のプロの風格が宿るってもんです。

なんつて

とーる|行動経済アナリスト