コラム#109行動経済学

売れないときほど、売れない判断をしてしまう。

売れないときほど、売れない判断をしてしまう。

どーも、とーるです。
ちょっと想像してください。
今月の売上が、思っていたより全然足りない。

カードの引き落としは来る。
家賃も来る。
スマホ代も来る。
そして銀行口座を見る。

「……あと3万円くらい欲しいな。」
こうなった瞬間から、
なぜかInstagramの見え方まで変わりませんか?

昨日までは普通に流していた、
「3日で10万円売れました!」
という投稿が急に気になる。
普段なら、

「はいはい」
で終わるのに、
今日は止まる。
プロフィールを見る。

無料プレゼントを受け取る。
LINEに入る。
動画を見る。
気づいたら、

29,800円の講座ページを開いている。
いや。
3万円欲しかったのに、

3万円使おうとしてるんです(笑)
でも、
こういうことって結構あると思うんです。

お金が足りない。
時間が足りない。
フォロワーが足りない。
集客が足りない。

売上が足りない。
人間って、
何かが「足りない」と感じると、

その瞬間から判断の仕方まで少し変わります。
今日はそんな、
「欠乏」

のお話です。

世界からコンセントしか見えなくなる

スマホの充電が80%あるとき、
バッテリーなんて気にしません。
YouTubeを見る。
Instagramを見る。

LINEする。
ゲームする。
普通に使います。
ところが、

残り3%。
急に世界が変わります。
駅に着く。
広告なんてどうでもいい。

新しいお店もどうでもいい。
景色もどうでもいい。
目に入るのは、

コンセント。

「あのカフェ充電できるかな」
「モバイルバッテリー売ってないかな」
「あと何分もつかな」
頭の中が全部、

残り3%に持っていかれます。
これ、
充電が減ったから、

急にあなたの頭が悪くなったわけじゃありません。
ただ、
「充電どうしよう」

が頭の中の席をひとつ陣取ってるんです。
他のことを考える余白が減る。
人間にも、

これと似たようなことが起こります。

「足りない」は、頭の中に居座る

行動経済学者のセンディル・ムッライナタンと、
心理学者のエルダー・シャフィールは、
こうした状態を、

Scarcity=欠乏
という考え方から研究しています。
お金が足りない。
時間が足りない。

食べ物が足りない。
人とのつながりが足りない。
人は何かが足りなくなると、
その不足しているものへ、

めちゃくちゃ注意を持っていかれます。
これ自体は悪いことばかりじゃありません。
例えば締切前日。

なぜか普段5日かかる仕事が、
4時間くらいで終わったりします。
「あれ、本気出したらこんなにできるんだ」

と思う。
だったら普段からやれよ、
という話なんですが(笑)
欠乏って、

目の前の一つに集中する力は強くなるんです。
ただ、
その代わりに、

横が見えなくなる。

ここが問題です。

「お金どうしよう」と考えた状態で、別の問題を解いてもらった

この研究、
やり方が結構面白いんです。
単純に、
「お金に困っていますか?」

と聞いただけじゃありません。
参加者に、
こんな状況を想像してもらいます。
「あなたの車が故障しました。」

そして、
ある人には、
修理代150ドル。
別の人には、

修理代1,500ドル。
くらいの違いを考えてもらいます。
感覚としては、
「まあ、なんとか払えるかな」

と、
「いやいや、ちょっと待って。どうすんのこれ」
くらい。

すると、
頭の中では当然、
「払う?」
「借りる?」

「修理やめる?」
「カード使う?」
みたいなことを考えますよね。
で、

その状態のまま、
今度はぜんぜん関係ない問題を解いてもらうんです。

「認知課題」

ざっくり言うと、
その場で考える力や、注意を切り替える力を見る問題
です。

例えば、
図形がいくつか並んでいて、
一か所だけ空いている。
「ここに入るのはどれでしょう?」

と規則を見つける問題。
学校で覚えた知識を答えるんじゃなく、
その場で、
「あ、この図形はこう変化してるな」

と考えるタイプです。
もう一つは、
ちょっとゲームっぽい問題。
画面の右側に何か出たら、

あえて左のボタン。
左に出たら右。
人間って、

右に出たら右を押したくなるじゃないですか。
そこを、
「いや、ルールは逆だった」

と一回止めて、
正しい方を押す。
つまり、
ついやりたくなる行動を抑える力

を見るんです。
なので、
「認知課題」
と聞くと難しそうですが、

ざっくり、
頭のメモリがどれくらい空いてるかを見るテスト
くらいに考えてください。

比較的小さい修理費を考えているときは、
所得が低い人と高い人で、
そこまで大きな差は出ませんでした。

ところが、
「1500ドルどうしよう……」
という、

本気で財布の心配をしなきゃいけない金額になると、
所得が低い参加者では、
その後の問題の成績が落ちた。

同じようなことが、
インドのサトウキビ農家でも調べられています。
サトウキビ農家って、

収穫前は手元のお金が少ない。
でも、
収穫したあとには、
代金が入る。

そこで、
同じ農家の人に、
収穫前と収穫後で問題を解いてもらった。

すると、
同じ人なのに、
お金に余裕がない収穫前の方が、
成績が低かった。

ここ、
めちゃくちゃ大事です。

同じ人なんです。

収穫した瞬間、
急に賢くなったわけじゃありません(笑)

脳みそを最新版にアップデートしたわけでもない。
ただ、
収穫前は、

「金どうしよう」
「支払いどうしよう」
が頭の中を占領している。
そのぶん、

別のことに使える余白が減っていた。
研究で見られた影響は、
IQ尺度に置き換えると約13ポイント相当とも説明されています。

一晩寝ていない状態と比べられるくらい。
結構デカいですよね。
でも、

「お金がないとIQが13下がる」
って話じゃありません。

頭の性能じゃなく、使える空き容量の話です。

頭の中で「売上.exe」がずっと起動している

これ、
パソコンにするとすごく分かりやすいです。
同じパソコンです。

昨日と性能は変わってません。
でも、
Zoom。
Chrome30タブ。

Photoshop。
動画編集。
LINE。
全部開いたら、

急に動きが重くなる。
「パソコン壊れた?」
じゃない。
開きすぎなんです(笑)

人間も同じ。
「今月あと3万円必要」
「カードの引き落とし大丈夫かな」
「来月も売れなかったらどうしよう」

「旦那に内緒だけど大丈夫かな」
こういうものが、
頭の裏側でずっと動いている。

本人は普通に投稿を作ってるつもりでも、
バックグラウンドでは、
売上.exe

支払い.exe
旦那にバレるな.exe
が同時起動している(笑)
そりゃ、

ちょっと重くなります。

売れないときほど全部変えたくなる

SNS起業初心者って、
そもそも欠乏が起こりやすいんです。
フォロワーが足りない。
実績が足りない。

見込み客が足りない。
売上が足りない。
知識が足りない。
時間も足りない。

足りないものフェスティバルです。
すると、
昨日まで普通に作っていた投稿が、
急に不安になります。

「この発信で合ってるのかな」
プロフィールを変える。
翌日、
「商品かな」

商品を変える。
翌日、
「価格かな」
値下げする。

翌日、
「今はリールらしい」
リールを始める。
翌日、

「いやThreadsらしい」
Threadsを始める。
翌日、
「AIやらないと遅れるらしい」

AI講座を買う。
そして予定していた講座や販売ローンチを急に前倒しにしたり

急に、この企画やります!ってストーリーズで発信する。
一週間で、
事業が6回くらい転生しています(笑)

本人は、
改善しているつもりです。
でも、
もしかすると、

事業を良くする判断じゃなく、

「今すぐこの不安を消したい」

という判断になっているかもしれません。

「高額を払えば本気になる」の話

SNSの高額スクールやコンサルで、
こんな話を聞いたことないでしょうか。
「高額を払うから本気になれるんです」

「払ったからには頑張ろうって思いますよね」
「回収しないと、と思うから人は動けるんです」

たしかに、
これはあります。
お金を払った方が、
「せっかく買ったしやろう」

となることはある。
無料で受け取ったPDFは、
ダウンロードした瞬間に役目を終えて、

Googleドライブの深海へ沈んでいきます(笑)
でも、
僕がちょっと気になるのは、

ここから、
「高額を払う=良い環境」
みたいな話になることです。
これ、

本当にそうでしょうか。

「払ったからやめられない」は、行動経済学だと注意する心理です

行動経済学には、
サンクコスト効果
というものがあります。
例えば、

映画館で1,900円払った。
映画が始まった。
30分経った。
めちゃくちゃつまらない。

あと2時間。
帰りたい。
でも、
「……せっかく1,900円払ったし」

となる。
本当は、
帰っても残っても、
1,900円は戻ってきません。

だったら、
残り2時間を何に使うかだけ考えればいい。
でも、

人間は、
すでに払った1,900円に引っ張られます。
そして、

つまらない映画に、
さらに2時間を投入する。
1,900円を無駄にしたくなくて、
2時間まで追加で失う(笑)

これが、
サンクコスト効果です。
つまり、

「30万円払ったんだから、絶対頑張らないと」
という状態って、

必ずしも理想的なモチベーションじゃありません。
行動経済学ではむしろ、

過去に払ったものに、今の判断まで引っ張られてない?

と注意する側の心理なんです。

気づいたら「夢」じゃなく「30万円回収」が目標になっている

例えば、
最初の目標は、
「自分の好きな仕事で生活できるようになりたい」

だった。
ところが、
30万円のスクールへ入る。
すると、

いつの間にか、
「まず30万円回収しなきゃ」
になる。
あれ?

最初の目標そこでしたっけ。
となります。
もちろん、
払った以上の成果を出したい、

は普通です。
でも、
「やりたいことを形にする」
じゃなく、

「30万円取り返す」
が一番上に来ると、
判断まで変わります。
早く売れるもの。

すぐ現金化できるもの。
高単価。
短期募集。
値引き。

モニター。
本当はやりたくない商品でも、
「回収するため」
なら始める。

そして、
30万円くらい売れた瞬間、
急に燃え尽きる。
目的が、

事業を作ることじゃなく、

借金取りみたいに30万円を追いかけること

になっていたからです。
逆に、
数千円の講座しか買ってなくても、
「これをやりたい」

が強い人は、
普通に何年も続けます。
僕は、
価格が熱量を作るというより、

”もともとある熱量を、投資が後押しすることはある”
くらいに考えています。
30万円払えば、

やる気ゲージ30万円分チャージされるわけじゃありません(笑)

起業するときの環境、大事だよね。

高額商品が良いとか悪いとか、
今日はそこが本題じゃありません。
例えば、
「旦那には内緒です」

「貯金ほぼありません」
「カードの支払いが来月あります」
「3か月以内に20万円売れないと厳しいです」

「スクール代も分割なので早く回収したいです」
この状態で、
「だからこそ本気になれるんです!」

と言う。
うん。
たしかに本気にはなると思います。
ただ、

本気と冷静さって、
別なんです。
崖から落ちそうな人は、
めちゃくちゃ本気で岩につかまります。

でも、
その状態で、
「5年後の事業計画を考えてください」
と言われても、

無理ですよね(笑)
今は岩のことしか考えられません。

余裕がありすぎてもダメ。焦りすぎてもダメ。

もちろん、
お金に余裕がありすぎると、
それはそれで、
「まあ来月やればいいか」

になります。
人間なので(笑)
だから、

何のプレッシャーもない状態が一番いい、
という話でもありません。
ある程度の期限。

ある程度の目標。
ある程度の緊張感。
これは必要です。
でも、

僕がSNS起業を始めるなら、
最低限、

今月売上0円でも、贅沢はできないけど生活はできる。

くらいの足場は作っておきたいです。
外食は減る。
欲しいものは買えない。
旅行も我慢。

でも、
家賃は払える。
ご飯は食べられる。
来月即終了じゃない。

このくらい。
その最低限の安心の上に、
「それでも僕はこれをやりたい」
という熱量を乗せる。

僕は、
この組み合わせが一番強いと思っています。

「お金がないから起業します」なら、先にバイトでもいい

ちょっと厳しく聞こえるかもしれませんが、
「お金がないから、SNS起業で今すぐ稼がないと」

という状態なら、
僕なら、
先にバイトでもします。
当たり前です。

「お金がない=起業する」
ではないからです。
月5万円足りないなら、
まず月5万円確保する。

全然格好悪くありません。
むしろ、
その5万円があることで、
「今日売らなきゃ」

が消えるなら、
めちゃくちゃ価値があります。
今日売らなくていいから、
ちゃんと商品を作れる。

今日売らなくていいから、
合わない人に売らなくて済む。
今日売らなくていいから、
意味のない値下げをしなくて済む。

今日売らなくていいから、
半年後を考えられる。
ビジネスって、
焦りが行動力になる場面もあります。

でも、
焦りが判断力を食い始めたら、
それは良い環境とは言えません。

必要なのは「背水の陣」じゃなく「足場」

起業というと、
「退路を断て」
「覚悟を決めろ」
「追い込め」

みたいな話が好まれます。
確かに、
それで成功する人もいます。
でも、

全員がそうじゃありません。
むしろ、
欠乏によって考える余白までなくなって、

短期的な判断ばかりになってしまう人もいる。
だから僕は、
背水の陣より、

最低限の足場

を作っておいた方がいいと思っています。
売上がなくても、
なんとか生きられる。

でも、
このままでいいとは思っていない。
そして、
自分のやりたいことがある。

この、
安心しすぎてもいない。焦りすぎてもいない。
くらい。

その環境で、
「やらなきゃ」
じゃなく、
「やりたい」

で動く。
高額を払ったから頑張るんじゃなく、
回収しなきゃいけないから頑張るんじゃなく、

自分がそこへ行きたいから頑張る。

僕は結局、
この熱量が一番長く続くと思っています。
もし今、

SNSを開くたびに、
「今すぐ稼ぐ方法」
ばかり目に入るなら、
本当に新しいノウハウが必要なのか。

それとも、
スマホの充電3%みたいに、
頭の中が欠乏でいっぱいになっているだけなのか。

一度考えてみてください。
コンセントしか見えないときに、
人生の進路まで決めない方がいいです。
まず充電しましょう(笑)

とーる|猫好きの行動経済アナリスト

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